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GCI芍薬訪問看護で活躍するセラピー・ハーピスト~ハープの音色でご利用者を癒したい~

はじめに

音楽って、どうしてこんなに心を癒やしてくれるんでしょう?古くから「音楽は心の薬」なんて言われていますが、その力が一番強くなるのは、演奏する人の想いと、聴く人の気持ちが深くつながったときだと思います。

今回は、セラピー・ハーピストとしてGCI芍薬訪問看護でボランティア活動している志村由紀子さんにお話を伺いました。彼女の音楽は、コンサートホールではなく、病院やホスピスなど、ケアの現場に届いています。ハープを通じて人と人をつなぐ、その想いとストーリーを、ちょっと覗いてみませんか?

音楽を「届ける」ということ:癒やしのハープ、その原点

インタビュアー: 志村さんの演奏活動は、当初からコンサートホールでなく、個人の患者さんなど「求められる場所」を大切にされてきたと伺いました。その、他者に寄り添おうとするお気持ちの原点はどこにあるのでしょうか?

志村由紀子さん: もともとは、ただ「ハープを弾いてみたい」という興味からでした。でも、最初に習ったのが「ヒーリングハープ」だったんです。そこで、ハープの音色が聴いている方にどれほど大きな影響を与え、人のためになる活動であるかを知りました。その瞬間に「これはやりたい!」と強く思ったのが、すべての始まりです。

インタビュアー: 実際に、これまで病院やホスピスでも演奏されてきましたよね。

志村由紀子さん: はい、病院やホスピスにも訪問させていただき、演奏の機会をいただいてきました。

インタビュアー: 単に楽器を演奏したいという個人的な欲求からではなく、「誰かのために」という気持ちが活動の原動力になっているんですね。GCI芍薬看護にもご連絡頂いて、セラピー・ハープ・ボランティアを始めて下さったのが2014年10月のことでした。かれこれ10年以上もGCI芍薬訪問看護でご活躍頂いています。

志村由紀子さん:GCI芍薬訪問看護さんの自己紹介をウェブサイトで見て、「こういうところでハープを演奏してみたい」って思ったんです。

インタビュアー:実際にGCI芍薬訪問看護で演奏されてみて、いかがですか?

志村由紀子さん:看護師さんたちが、患者さんに接する姿にすごいな~と思いました。仕事でお金をもらっているからってできることではないと感じたんです。私には看護師さんの仕事はできないから、でもハープで看護師さんと同じように患者さん達を癒すことができたら、とそう思えました。

音楽による感情の錬金術:苦手意識さえも美しさに変える作曲法

インタビュアー: ご自身で作曲もされるそうですが、どんな時に曲が生まれるのでしょうか?特に「この人のために作ってあげたい」と思うのはどんな瞬間ですか?

志村由紀子さん: 元気がなかったり、悲しんでいたりする方のために作ることもあります。ですが、時には特別な理由もなく、純粋に「この人の曲を作ってあげたいな」と感じて作ることもありますね。作曲すると、苦手な相手の本来の美しさが見えることもあります。

インタビュアー: 苦手な相手の「本来の美しさ」を見出すというのは、すごく面白いですね。具体的にはどうやって?

志村由紀子さん: 人間関係で、相手の嫌な部分が見えてしまうことってありますよね。そんな時、私は意図的にその人の「本当の美しいところ」を探して、それを見つめながら曲にするんです。すると不思議なことに、その人を心から受け入れられるようになって、最後は幸せな気持ちになるんですよ。


インタビュアー: まさに音楽による心のリフレーミングですね。この作曲の力からご自身の人生の重要な時に特に大きな影響を受けたそうですね。


志村由紀子さん: はい。母が余命宣告を受けた時、私はひどく動揺しました。でも「母のために曲を作ろう」と決めて作曲を始めたら、あれほど激しかった心の動揺がすっと消えていったんです。あの体験は忘れられません。

内なる静寂との対話:瞑想が音楽にもたらすもの

インタビュアー: ハープを始めてから比較的早い段階で瞑想も始められたそうですが、きっかけは?


志村由紀子さん: ハープを演奏する上で「精神性」や「揺れない心」がいかに重要かを痛感していた時期がありました。そんな時、友人から瞑想会を紹介されたんです。

インタビュアー: その瞑想会での指導者の方との出会いが大きな転機になったそうですね。


志村由紀子さん: はい。ある時、近所のデイセンターでの演奏で「『アヴェ・マリア』楽しみにしてたのに、いい演奏じゃなかった」と言われました。初めてそんなことを言われて、ショックでガクンとなって、自信を失いかけていました。そんな中、瞑想会で先生にお会いしたのですが、私は何も話していないのに、先生がいきなり「東北にはボランティアに行かないの?」と尋ねられたのです。その言葉に導かれるように仙台のホスピスを訪ねました。そこで演奏した時、患者さんから「あなたのハープを聴いていると、色々なところに行けたわ」と言われて…その一言で、失いかけていた情熱を取り戻せたんです。


インタビュアー:それは非常に興味深いエピソードですね。信頼する指導者からの予期せぬ問いかけが、ご自身の行き詰まりを打破する触媒となったのですね。志村さんがその時必要としていた承認と目的の再確認を、この体験を通じて得られたわけですね。その瞑想会でも演奏されているそうですが、瞑想会での演奏会は、他とは違う特別なものでしょうか?

志村由紀子さん:はい。瞑想会では、その場の「空気」や「波動」を全身で感じ取ります。そして、「今、弾いた方がいいな」「この曲がいいな」という直感に従って、即興的に演奏するのです。後で参加者の方々から「あの時のあの曲は、本当にぴったりだった」と言われることが多く、場のエネルギーと調和できているのだと感じます。


インタビュアー:瞑想会での演奏で、直感と精神性を磨き、そして他者との一体感を体験していらっしゃるんですね。こうしてずっと研鑽を積んでこられたので、ご自身でも変化というか、手ごたえを感じていらっしゃるのではないでしょうか?


志村由紀子さん:先生にお会いしたばかりの頃、先生に自分はハープを弾いている事、演奏ボランティアをしている事をお話ししました。先生は私に世界1のハープ弾きになれるよ、自分の中の山や川を無くして平らにならしなさいとおっしゃって下さいました。先生からそう言われた時は意味がよくわかりませんでしたが、瞑想や真理の勉強を通して先生のその深い、深い言葉の意味が今やっと少しだけ感じられるようになりました。

師の言葉は音楽の道標:自己と向き合うということ


インタビュアー: 志村さんのもうおひとりの師であるハープの先生からは、どんなご指導を受けているのでしょうか?


志村由紀子さん: あまり「練習しなさい」とは仰いません。演奏技術ではなく、私には「精神的にぶれないこと」を重視されます。「ぶれている人は信用できない。」「演奏にはその人の内面がすべて出る」と常におっしゃいます。


インタビュアー: 厳しいけれど、深い言葉ですね。


志村由紀子さん: はい。レッスン中、緊張でハープを物にぶつけてしまった時、「周りを見ていないからだ。」と指摘されました。そして「トライします」と言ったら「そうじゃない、『感じてみます』と答えなさい」と。音楽は、周囲を繊細に感じ取ることから始まるんだと教えられました。努力や試行錯誤ではなく、まず世界を全身で感じ取ること。その一言に、先生の哲学のすべてが詰まっている気がしました。今思えば、技術でも、その時の演奏の上手い下手でもなく私のあり方そのものと向き合ってくださる、本当にありがたい言葉でした。


インタビュアー:師からは「練習しなさい」と言われなくても、毎日2~3時間は練習されているんですよね。作曲も、師から促されるわけではなく、自主的に?


志村由紀子さん:最近は自然と練習するようになりましたね。作曲も、先生から特に何か言われるわけではなくて、作りたいから作る。自然と曲が私の中に沸き上がってきます。


インタビュアー:GCI芍薬訪問看護の小児のご利用者をイメージして作って下さった曲も可愛くて素敵な曲ですよね。今日は志村さんのお話をじっくりとお伺いし、志村さんのセラピー・ハープがなぜGCI芍薬訪問看護のご利用者やご家族の心を癒してくれるのか、より深く理解できました。ありがとうございました。


結び(サマリー):ハープは生き方を映し出す


志村さんとの対話を通じて見えてきたのは、彼女にとってハープが単なる楽器ではないという事実です。それは、自己と他者を繋ぎ、内面を深く掘り下げ、時には心に引っかかる感情さえも美しさへと昇華させるための「鏡」のような存在なのです。人のために演奏したいという初期衝動から始まり、瞑想による内なる探求、そして師との厳しい対峙に至るまで、彼女の音楽、精神性、そして人々との関わりは、すべて一つの線で結ばれています。師が説くように「演奏に内面がすべて出る」のであれば、彼女の真摯な生き方そのものが、ハープの弦を奏で、聴く者の心を深く癒す、唯一無二の音色を生み出しているのでしょう。GCI芍薬訪問看護のご利用者はご自宅で、そんな志村さんの音楽を聴くことができます。