写真の説明: GCI芍薬訪問看護傘下の訪問看護ステーションである、訪問看護ステーション芍薬で主任看護師として勤務している大出寛子さん。GCI芍薬訪問看護では電動自転車での訪問も可能。
GCI芍薬訪問看護はリベラル(自由)でプロフェッショナルかつ倫理的な組織文化を目指しています。この組織文化は、上下関係がハッキリとしていて上司が指示し部下をこの指示に従わせるというマネジメントでは実現できません。GCI芍薬訪問看護で働くスタッフは全員志が高く、自律し有能で豊富な潜在能力を有していますが、ギチギチに管理するマネジメントではこのような潜在能力を開花させることができないのです。また、在宅でのご利用者のニーズは多岐に渡ります。個々のスタッフがご利用者の個別性に合わせ自分自身で創造的かつ主体的にケアを提供できるようになることこそが、高い質のケアの実現であると考えています。その一方で、特に在宅ケアを初めて経験する新入職者は不安がいっぱいで、それまでの看護や対人援助の経験・能力をいかせず悔しい思いをするスタッフも少なくありません。このような状況で、看護管理者(主任)としてスタッフにとって働きやすい職場づくりを目指している大出寛子看護師に、看護管理の実践とやりがい、そして今後の展望についてインタビューしました。
目次
GCI芍薬訪問看護入職から10年~実現できたことと変わらない思い
インタビューアー
まずは大出さんが10年前に訪問看護ステーション芍薬にご応募された際の志望動機を振り返ってみたいと思います。10年経過して、この志望動機にある通りに看護師としての理想やビジョンは実現していると思えますか?
大出さんご応募時の志望動機
一人で現場におもむく訪問看護師には、幅広い知識に基づいた判断やアセスメント能力、柔軟な対応力、的確な技術が求められると思います。そしてそれは看護師としての私の理想でもあります。9年間の病棟での看護経験を終え、一人の看護師として自分には何が出来るのだろうと考えたときに、医療の現場は病院だけではない、どんな現場でも自信を持って働けるようになりたいと感じました。日常生活の場である在宅で、今までつちかってきた技術や知識をさらに深め、アセスメント能力を高めていきたいと思っています。また以前から、がん性疼痛に対する疼痛コントロールや緩和ケアに興味を持っており、今後学びを深めていきたいと考えていました。そのような中で、訪問看護ステーション芍薬では成人から老年・小児を対象にしていること、24時間体制であること、緩和ケアを行っていること、認定看護師がいること、教育体制が整っていること等を知り、是非御社で働きたいと思い応募致しました。
大出寛子看護主任
応募したときから考えは変わっておらず、やはり訪問看護には的確なアセスメント能力と実戦力そして柔軟性が求められると思います。入職してからの10年で病院では見えてこなかった生活に密着した看護を学ぶことができたと思います。年齢や疾患に関わりなく生活を支える看護の大切さをより強く感じていますし、今後も学び続けていきたいと感じています。
他の看護師のビジョン実現の支援
インタビューアー
志望動機としては看護師としての理想やビジョン実現を目指していたわけですが、入職して7年目である2022年からは看護管理者として、他の看護師の理想やビジョンの実現を支援する側になりましたね。
大出寛子看護主任
2021年に看護管理者認定コース・ファーストレベルを受講させて頂き、自分だけではなく皆が働きやすくなる職場づくりや組織を作り上げていくということが、一体どんなことなのかを知ることができました。誰かがそういう役割を担わないと、どんなに個々の看護師が優秀でも物事がうまく回らなくて質の高い看護を実現できないということが分かったんです。
インタビューアー
縁の下の力持ちということでしょうか。陰にまわって訪問看護師が働きやすくなるようにする役割ですね。
大出寛子看護主任
でも、どういう組織が看護師にとって働きやすい組織なのか、自分はどう動けば良いのか、そもそも何から手を付けていくのがベストなのか、など、まだまだ手探りです。GCI芍薬訪問看護は自由(リベラル)にさせてくれるので、クリエイティブにできているという感触はあるのですが。
インタビューアー
この3年間で大出さんは、本部に対しても様々な革新的な提案を行い、業務改善の実績をあげてきていますが、手探りだったとは驚きです。手ごたえもあるのですよね。
大出寛子看護主任
管理者からは、主任になる前から「組織を色々動かせるようになると面白いよ。」というアドバイスを頂いてきましたが、何となく、それがどういうことなのか分かってきました。
最も難しいのは判断すること~判断した結果に責任を持つ
インタビューアー
看護管理者として最も難しいと思うことは何ですか?
大出寛子主任
判断を下すことです。難しくても、スタッフが私に求めているのは判断を下すことです。そして、そう判断した理由をスタッフにきちんと説明するということも、スタッフは私に求めています。例えば、緊急コールがあり、誰に行ってもらうかその場その場で判断しているわけですが、時には非常に心苦しい。皆忙しいことは分かっているわけですから。その判断が正しかったのか、最善だったのか、どちらにしても私は結果の責任を負わなければなりません。その覚悟をもって、個々の判断にあたっています。
インタビューアー
緊急時だけではなく、定期訪問でどの患者さんにどの看護師が訪問するかを判断しているのも大出さんですよね。
大出寛子主任
スケジュール管理は個々の看護師が働きやすくなる為の最も重要なマネジメントです。訪問件数が少なければ訪問看護師が働きやすいかと言えばそうではありません。訪問してこそ訪問看護師はやりがいを感じたり経験を重ね成長することがでるのですし、多くのケースをこなしつつ効率よく最大限の効果を上げる訪問にするという能力も、訪問看護師にとっては重要ですから。
インタビューアー
個々のスタッフの成長段階や中長期的なキャリア形成を見据えた訪問スケジュールを組んでいるということですね。他にはどのような要素を勘案して訪問スケジュールを組んでいるのですか?
大出寛子主任
これはどの訪問看護ステーションでもそうだと思いますが、訪問ルートや移動時間を考慮するのは重要です。全ての看護師が車を運転できるわけではないので、自転車や公共交通機関での移動の場合を考える必要もあります。それから、ご利用者の疾患や年齢などの属性と訪問看護師のスキルや関心事とのマッチングも考慮します。ご利用者と訪問看護師の相性も時に重要になります。
インタビューアー
そんなに多くの考慮要件があるんですか!? GCI芍薬訪問看護のご利用者は入れ替わりが激しいので、相当大変ですよね。
大出寛子主任
ご利用者の事情も考慮しなければなりません。例えば、夕方遅い訪問看護をご希望されるご利用者には、16時に勤務終了する訪問看護師には訪問させられません。また、看護師側の希望も考慮しています。例えば、呼吸器疾患のケースに主に従事したいとか、小児のケースに訪問したいという、看護師としての成長を目指した希望には必ず応えようと心掛けています。
他職種と協働して成果を上げる看護管理
インタビューアー
多くの考慮要件を勘案しながら、月間140名、1,000件もの訪問スケジュールを立てるのは相当大変なのでしょうね。
大出寛子主任
主任就任当初は、訪問スケジュールをシステム登録するのを忘れてご利用者から激怒される夢を何度もみました。恐怖でした。でも、現在はスタッフや本部も協力してくれるのでだいぶ楽になりました。
インタビューアー
どんな協力ですか?
大出寛子主任
リハスタッフはご自身でスケジューリングして下さっています。看護スタッフは、個々の訪問の中でご利用者から訪問スケジュール変更の依頼があった際、その変更が単月の「スポット」の変更なのか、恒久的変更の訪問「マスター」の変更なのかを区分し情報共有用のシステムに入力してくれます。本部ではこの情報を月に1回集計し、翌々月の予定訪問スケジュールとしてシステム登録してくれるのです。私はこの予定訪問スケジュールをみて、間違いがないかを確認したり、スポットの変更や新規の訪問スケジュールを加え、確定版の訪問スケジュールを作成するのです。
インタビューアー
訪問看護のほとんどのスケジュールは定期訪問で事前に決まっているわけですから、2か月前から準備ができるのですね。このような画期的な仕組みを導入したのは大出さんですよね。
大出寛子主任
現在の仕組に落ち着くまでは1年以上試行錯誤でした。事前に決まっているとはいえ、個々のご利用者のご都合に合わせ訪問スケジュールが変更されることは日常茶飯事です。そのような「スポット」の変更も当初は本部に入力してもらっていたのですが、どうしてもうまくいきませんでした。それで思い切って、「スポット」の変更は看護師だけで管理することにしてみたんです。
リスクを取れるのは強い思いがあるから
インタビューアー
そういう風に、従来のやり方をガラリと変えてみることって、勇気がいることだと思うのですが、大出さんはこの3年で他にもやり方を変えた場面が色々ありましたね。どんな思いで個々の改革に取り組んでこられたんでしょうか?
大出寛子主任
業務を円滑化したいという思いです。私たちは世界最高水準の在宅ホスピス緩和ケアを提供するという壮大な理念で看護をしていますが、このような壮大な理念は、ひとつひとつの細かな業務が正確かつ効率的に実行されることの積み上げなくして実現できないと思っています。この壮大な理念実現の為の基礎の基礎は一件一件の訪問です。一件一件の訪問、つまりそれらの訪問にかかわるご利用者と看護スタッフひとりひとりを大切にする為に、業務を円滑化することが大切だと思っています。
インタビューアー
「神は細部に宿る」とか「悪魔は細部に宿る」とよく言われますが、そういうことですね。
スタッフ教育に力を入れたい~まずは新任教育
大出寛子主任
業務を円滑化することで短縮した業務時間を看護や教育に充てられるということも視界に入っています。特にこれからスタッフ教育には力を入れたいと思っていて、それで業務の整理を急いでいるというのがあります。
インタビューアー
今後の展望ですね。聴かせて下さい。
大出寛子主任
スタッフ教育については、特に新任教育を工夫していきたいと思っています。私自身、訪問看護を初めて経験した時に「難しいなあ・・・。病院の看護と全然違う。」と感じたように、新任スタッフが戸惑うのは当然だと思うんです。そういう時、ただ口で説明しても新任スタッフは孤独感を感じるばかりなんだろうな、というのも最近よく分かってきました。ですから、手を持って、「さあ、一緒に看護をしていきましょう!」という雰囲気を作る必要があると思っています。
インタビューアー
その話をお伺いしていて、“シチュエーショナル・リーダーシップ”(※注1参照)のコンセプトを思い出しました。スタッフの能力やモチベーションに応じて、リーダーシップのスタイルを変化させることが効果的なリーダーシップの発揮であるという理論です。GCI芍薬訪問看護は在宅ホスピス緩和ケアに特化しているので、在宅ホスピス緩和ケアを提供したい、という志の高い看護師のご応募が多く新人スタッフのモチベーションも高いのではないでしょうか?
(※注1)“シチュエーショナル・リーダーシップ”の詳細は下記ウェブサイトをご参照下さい:
Wiki日本語版:シチュエーションリーダーシップ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97
Harvard Square: Situational Leadership
https://leadersexcellence.com/situational-leadership/
大出寛子主任
モチベーションは高いですが、訪問看護未経験者だと、自分らしい看護を提供できるようになるまでには最低1年は必要です。最初の1年が訪問看護師人生の最も大変な踏ん張りどころだとも言えます。この間は特に丁寧な関わりをしていこうと思っています。でも、病院では常に近くに看護管理者が居るので報告・連絡・相談しやすい環境でしたが、訪問看護では看護管理者も訪問しているので、直接会う時間が取れなかったりします。電話でもラインでも、「いつでも連絡してね。」と言っていても、なかなか連絡しにくいこともあるようです。
インタビューアー
それはシチュエーショナル・リーダーシップ理論によると、そうした特徴のスタッフは開発レベル(※注2参照)がD1なので、S1のリーダーシップが適切な状態ですね。やる気がありコミットメント度も高い一方で、まだ仕事に慣れていないので本来の能力を発揮できず仕事に慣れるのに必死で不安がいっぱいなスタッフに対して、このタイプのリーダーシップが有効だとされています。このようなスタッフに対してリーダーは、多くの時間を共に過ごすべきだとされています。明確に指示し、常にフォローする為です。新人の域を脱して次の成長段階に入ったスタッフに対しては、どのような対応をしていこうと思っているのですか?
(※注2)シチュエーショナル・リーダーシップ理論で説明される開発レベルD1からD4については次の図をご参照下さい。

出典:下記の出典からインタビューアーが要約し図表化した
出典1:Wiki日本語版
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97
出典2:Wiki英語版
https://en.wikipedia.org/wiki/Situational_leadership_theory
出典3: “Situational leadership theory in nursing management: a scoping review”
フルバージョンのPDFは以下のサイトでダウンロード可
https://www.researchgate.net/publication/387225169_Situational_leadership_theory_in_nursing_management_a_scoping_review
スタッフ教育に力を入れたい~次に現任教育
大出寛子看護師
私が管理者にしてもらってありがたいな、と思っているのは、不安や愚痴を何でも聴いてくれることなので、スタッフにもそうしたいと思っています。
インタビューアー
シチュエーショナル・リーダーシップ理論だと、能力が高いが仕事にムラがあったり、自信がないもしくはコミットメントレベルが低い開発レベルD3のスタッフに有効なリーダーシップだとされています。個々のタスクに関する詳細なアドバイスやフォローはほとんど不要なほど成長している場合でも、このタイプのスタッフに対してリーダーは、一定レベルのパフォーマンスが発揮されているか確認する必要があるとされています。その確認方法が、リーダー側が話すのではなく、スタッフの話に耳を傾け自信を持たせたりサポートしたり、ということになるわけです。
大出寛子主任
うまくいかなかったことを話しても、芍薬の管理者は「ふ~ん、そうだったんだ・・・。」とだけ言って後は何もアドバイスとかなく、フッと力を抜く反応で待ってくれます。そのお陰で私も力を抜くことができるので、自分もスタッフから相談されたらそういう風にしたいと思うのですが難しいです。
インタビューアー
それは難しいですよ。だって、アドバイスしたくなっちゃいますもの。大出さんのように経験が豊富で力のある看護師なら、きっと何を相談されてもお見通しでしょうから。
大出寛子主任
でも、そこでアドバイスをもらっても、何の効果もない、っていうのも分かるんです。
インタビューアー
なぜですか?
大出寛子主任
だって、自分でそもそも話しながら気づいていたりするわけですから。
インタビューアー
なるほど。大出さんも管理者に話して、自分で気づいて自分で問題解決できているんですね。ただ聴いてもらえるのがありがたいって、そういうことなんですね。管理者もそれを分かって黙って聴いて、待ってくれるわけですね。最後に、スタッフ教育に加えて、大出さんが今後取り組んでいきたいことを教えて頂けますか?
スタッフを巻き込んだ勉強会
大出寛子主任
教育とも関連してくるのですが、勉強会の係でもあるので、ステーション内の勉強会を充実化させたいと思っています。
インタビューアー
勉強会開催は、訪問スケジュールを立てる時と同様、スタッフの個別性に対応しなければならないので大変ですよね?
大出寛子主任
その通りです。採血が苦手だから勉強したい、とか、コミュニケーション能力を強化したいとか、スタッフによって興味や関心は様々なので、いかにスタッフを巻き込んで、主体的に学べる勉強会にするかが鍵だと思っています。その為にはまずは勉強会の年間計画を立てないといけないです。マニュアルも充実化させていきたいと思っています。こうした形として残るものがあれば、自分が居なくてもスタッフだけで誰でも同じように動けるし、効率性も良くなって看護師の働きやすさにつながるのだと思います。
インタビューアー
とにかくスタッフが働きやすくなるようにする、ということを大出さんは常に考えているんですね。そういえば大出さんはICTが必ずしも看護師の働きやすさにつながっているとは言えないのでは?という疑問をお持ちだそうですが、これはどういうことなのでしょうか?
ICTの活用は必ずしも働きやすさにつながらない?!
大出寛子主任
GCI芍薬訪問看護でも、スマホやLINE、クラウド型電子カルテなどICTツールを駆使していますが、確かに個々の業務は効率化したのですが、業務自体が増えてしまっているように感じることがあります。こうした技術についていけないスタッフも居ます。それから、看護記録も即座に作成できるようになりましたが、スマホの影響で即座に回答を求められる場面も増えました。仕事とプライベートをしっかりと分けて、プライベートな時間にはリフレッシュできる環境をスタッフには作ってあげたいのですが、ICT技術の進歩で、これが難しくなったように思います。
インタビューアー
本来生活を便利にする為のテクノロジーが、逆に生活しにくくしているという現象ですね。現代人の家庭では便利家電を多く取り揃えていますがこうした家電を使う家事に追われ、未開拓の森などに住んでいて家電製品を一切持たない住民よりQOLが低い、という皮肉な研究結果を思い出しました。今後もAIを含めICTを積極的に導入していこうとしているGCI芍薬訪問看護としては、この逆説的課題には取り組んでいかなければならなりませんね。お休みの日には業務携帯をオフにすることを奨励したり、技術的サポートを充実化するなど、スタッフのQOLを常に考えながら新技術の導入を進めていかなければなりませんね。新しいことや困難なことにも積極的に取り組んでいる大出さんの目標は、常にスタッフの働きやすさの追求なのだということが今日はよく分かりました。ありがとうございました。
サマリー
芍薬に応募したのは、訪問看護師に特有の能力・技術に魅力を感じたのと、それまで病院で得た技術・知識を活かし、どんな現場でも自信を持って働けるようになりたいと思ったからです。入職して10年が経過し生活に密着した看護を実現する中で、10年前と変わらず訪問看護にはアセスメント能力、実践力、柔軟性が求められると思っています。
2022年からは看護管理者の任を担っています。看護師全員が働きやすくなる組織を作るという役割を誰かが担わないと、高い質の看護を実現できないということが看護管理者認定コースを受講して分かりました。どういう組織が看護師が働きやすい組織なのか、どうすればそのような組織が出来るのか、手探りですがクリエイティブには動けています。3年間業務改善に取組んできた現在では「組織を動かせるようになると面白いよ。」という管理者のアドバイスが理解できます。
看護管理者として最も難しいのは判断を下すことです。スタッフは判断した根拠を示すことも私に求めています。判断の結果に対して責任を負う覚悟をもって、個々の判断にあたっています。
定期訪問でどの患者さんにどの看護師が訪問するのかを判断しているのも私です。スケジュール管理は訪問看護師が働きやすくなる為の最も重要なマネジメントです。基本的にはご利用者の属性やご事情、訪問看護師のスキル、訪問ルートや移動時間、そしてご利用者と訪問看護師の相性といったことを考慮してスケジュールを組みます。これらに加え、個々のスタッフの成長段階や中長期的なキャリア形成を見据えてスケジュールを組んでいます。
リハビリ職の訪問スケジュール管理はリハビリチームに任せています。リハビリも含めると一か月の訪問件数が1,000件に上りますが、このほとんどが事前に時間枠の決まった定期訪問ですので、2か月前に本部事務に予定を入力してもらっています。臨時で訪問時間枠が変更になることもよくありますが、こうした変更は看護管理側が管理し入力も行っています。以前は全ての訪問予定を本部が入力していましたが、このように時には他職種との協働作業を大胆に変えてみるということもしています。
従来のやり方を変えるということにはリスクが伴いますが、業務を円滑にしたいという思いから断行してきました。私たちが目指す世界最高水準の在宅ホスピス緩和ケアは、ご利用者とスタッフを大切にすることで初めて成しえることができるわけですが、その為には、ひとつひとつの細かな業務を正確かつ効率的に実行することを積み上げていかなければなりません。
病院の看護と訪問看護は全然違うので、どんなに経験を積んだ看護スタッフでも、最初は戸惑います。モチベーションは高いのですが自分らしい看護ができるようになるまでに1年はかかります。病院であれば物理的に常に近くに居て報告・連絡・相談しやすい環境ですが、訪問看護ではこれは不可能です。ですので、丁寧に支援的姿勢で新任教育に力を入れていきたいと思っています。(シチュエーショナル・リーダーシップ理論の開発レベルD1のスタッフに対してS1のリーダーシップが有効)
新人の域を脱して次の成長段階に入ったスタッフにとっては、不安や愚痴など何でも話せる看護管理者でありたいと思っています。芍薬の管理者から、私がずっとそうしてもらってきたからです。管理者からは「ふ~ん、そうだったんだ・・・。」と力を抜く反応で待ってもらってきたので、私もこうした反応でスタッフに関わっていきたいのですが難しいです。アドバイスしたくなりますが、力のあるスタッフは、私からのアドバイスではなく自分で話して気づいて解決できるので、黙って聴いて待ちたいと思います。(シチュエーショナル・リーダーシップ理論の開発レベルD3のスタッフに対してS3のリーダーシップが有効)
勉強会の係でもありますし、勉強会も充実化していきたいと思っています。スタッフによって勉強したいことは様々ですので、スタッフを巻き込んで主体的に学べる勉強会にしたいと思っています。マニュアルも充実化し、私が居なくてもスタッフだけで誰でも同じように動ければ、看護師の働きやすさにつながると思います。
GCI芍薬訪問看護ではICTを活用し業務効率化していますが、業務自体が増えたり、技術自体についていけないスタッフも居るという問題があります。スマホの影響で即座に回答を求められるようになり、スタッフにとってオンとオフの境界線を作りにくくなっていて、今後の課題です。