写真の説明: 関さんが実習指導者研修で使用した教材
GCI芍薬訪問看護は2010年の開設当初から実習生や研修生を積極的にお受入れしてきました。その理由は、看護師が次世代の看護師を育成するのは専門職として当然のことだと捉えていると同時に、訪問看護ってこんなにご利用者の為になって、やりがいがあって、真の看護なのだということを多くの看護師(の卵さん)に知ってもらいたいという思いがあるからです。
今回のGCI芍薬訪問看護のインタビューに応じてくれたのは看護スタッフの関美佐さんです。関美佐さんのご活躍は、2026年2月の認知症症例検討会のブログでもご紹介しました。今回は関美佐さんが実習指導者としても活躍している様子をお伝えします。
目次
「真の看護」を伝えたい ― 実習指導者・関美佐さんの想い
──関さんは令和3年の芍薬訪問看護への入職当初から実習担当としてずっとご活躍されてきました。令和6年には 実習指導者研修を受講されましたがいかがでしたか?
関さん: 地域で勤務する看護師を対象とした研修に参加したのですが、訪問看護ステーションだけでなく、保健師さんや助産師さんなど、約60名もの方々が集まっていて驚きました。
これまでは大学で教員(助教)として指導していた経験もあり、「実習の目標設定などは学校側がやるべきこと」という意識がどこかにありました。ですが、研修を通して、受け入れ側としても「自分たちの訪問看護の特徴」を活かした目標を立て、学生・研修生にどうなってほしいかをしっかり考えていく重要性を改めて実感しました。
── そうすると、実習指導者研修受講前と後で、学生への向き合い方に変化はありましたか?
関さん: 以前は、学生さんが傷つかないように環境を整え、現場を見せることで「看護って楽しいんだ」という動機付けができれば十分だと思っていました。もちろんそれも大切ですが、今は芍薬ならではの在宅ホスピスや緩和ケアについて、意図を持って伝えていきたいと考えるようになりました。
GCI芍薬訪問看護で学べる看護の本質とは?
── 関さんの考える「芍薬ならではの良さ」とは、具体的にどのようなことでしょうか?
関さん: 一番は、在宅ホスピスや緩和ケアを肌で感じられることです。大学の講義で「緩和ケア」や「病の軌跡(経過)」について学んでも、学生にとっては正直あまり面白くなかったり、ピンとこなかったりすることが多いんです。でも、実際に利用者さんと向き合うことで、「あの講義で言っていたのは、こういうことだったんだ!」という深い納得感に繋がります。
また、看護という仕事が「利用者さんにどのような感情を与え、自分の中にどのような感情が生まれるのか」を体験できる。こうした「動機付け」ができる場所であることが、芍薬での実習の大きな価値だと思っています。
── なるほど。看護の魅力が、芍薬の在宅ホスピス緩和ケアを通じて深く理解できるということなんですね。そんな効果を得る為に独自の工夫をされていると伺いました。
関さん: 学生の背景と芍薬の特徴を掛け合わせた「マップ」を作成しています。実習に来る学生さんは、学年も違えば、目指す看護も一人ひとり異なります。それでも、芍薬としての目標や方針という「軸」がしっかりしていれば、どの学生が来ても、一貫した看護の本質を伝えることができると考えています。
── どの学生が来ても、ということですが「今時の学生さんは……」という声もよく耳にしますが、関さんはどう感じていますか?
関さん: 看護実習指導者研修の中でも「今の学生はコミュニケーションが苦手だ」といったステレオタイプな議論がありましたが、私は少し違和感がありました。
確かにお昼休みをきっちり取る子もいれば、合間を縫ってカンファレンスに出たがる子もいて、個性は様々です。大切なのは「今の年代だから」と一括りにするのではなく、一人ひとりの個性を見極めて、一人の人間として向き合うことだと思っています。
「点と点が繋がる瞬間」を作る。関さんが作成する「指導マップ」の正体
実習指導者研修を経て、関さんが独自に作成している「指導マップ」。それは、単なるスケジュール表ではなく、学生が看護の本質に触れるための「設計図」です。
── 関さんが作成している「マップ」の話に戻りたいのですが、具体的にどのようなものですか?
関さん: 簡単に言うと、「学生の背景」と「芍薬の特徴・環境」を掛け合わせ、学生の目標とGCI芍薬訪問看護としての目標の両者を同時に叶えるための手段をまとめたものです。
学校側が用意した目標を達成できるようにフォローするのは大前提ですが、そこに「芍薬に来たからこそ学べること」を組み込んでいます。学生さんがどの大学の何年生か、これまでにどのような実習を経験してきたかという背景を踏まえ、うちのステーションの環境(在宅ホスピスや緩和ケアの現場)で何を見せ、何を体験してもらうかを一貫した方針として整理しています。
── マップを通じて伝えたい「看護の核」は何でしょうか?
関さん: 私が一番大切にしているのは、「大学での座学(点)」と「現場での体験(点)」が繋がり、「一本の線」になる瞬間の喜びを伝えることです。
この「理論が実践として腑に落ちる体験」こそが、私が伝えたい看護の核の一つです。
── 感情の動きについても重視されているとお聞きしました。
関さん: そうですね。看護という仕事が利用者さんにどのような感情を与え、また自分の中にどのような感情が生まれる職業なのか」を実感してほしいと思っています。
素晴らしいケアの現場を肌で感じ、「看護ってこんなに楽しいんだ、素晴らしいんだ」というポジティブな「動機付け」さえできれば、実習が終わった後も学生さんは自ら進んで頑張っていけるはずです。
── 学生さんの学年や学校が違っても、指導の軸はぶれないのでしょうか?
関さん: はい。導入の仕方や接し方は、1・2年生と卒業を控えた学年では当然異なりますし、軸がぶれそうになるときもあります。そういうときは「訪問看護ステーションとしての一貫した方針」つまり「指導の軸」に立ち返ることを意識しています。
「ここに来た意味」をすべての学生に持ち帰ってもらえるよう、このマップを基に、在宅ホスピスや緩和ケアについて意図を持って伝えていきたいと考えています。
正直、簡単ではない。それでも実習を受け入れ続ける理由
── 実習を受け入れる中での「難しさ」を感じることはありますか?
関さん: 正直なところ、スタッフ全員が同じ熱量で実習に向き合うのは簡単ではありません。日々の業務が忙しい中で、同行訪問などの調整には苦労することもあります。
── 現場のスタッフ全員を巻き込んで学生を育てるのは、簡単ではないですよね。
関さん: 正直に申し上げて、かなり難しい部分もあります。日々の業務スケジュールが非常にタイトな中で、学生の「同行訪問」を受け入れる余裕がチーム全体に十分にあるわけではありません。ですが、運転が苦手な中でも調整に協力してくれたり、学生の気持ちに寄り添ってくれたりと、非常に前向きに取り組んでくれているのも事実です。
── 具体的に、スタッフのモチベーションを高めるためにどのような工夫をされていますか?
関さん: 「感謝のフィードバック」を徹底したいと考えています。実習の最後に学生がどのような学びを得たのか、そして指導に当たったスタッフへの感謝の言葉を、カンファレンスなどの場で具体的に共有しています。
単に「実習が終わりました」と報告するのではなく、「〇〇さんが同行してくれたおかげで、学生がこんなに喜んでいました」「先生からも感謝のレターをいただきました」と名前を出して伝えることで、スタッフ自身も「次世代を育てる力になれた」という手応えを感じられるようにしたいと思っています。
── 指導の内容がスタッフごとにバラバラにならないための工夫はありますか?
関さん: そこで重要になるのが、先ほどお話しした「マップ」による方針の共有です。
芍薬としての明確な目標や、芍薬ならではの「看護の本質」を言語化しておくことで、どのスタッフが学生を連れて歩いても、伝えるべき本質がブレないようになります。スタッフに「これを一字一句教えてください」と強いるのではなく、「芍薬としては、この在宅緩和ケアの素晴らしさを一番に伝えたいんだ」という共通のゴールを周知しておくことが、チームで実習指導に臨む土台になります。
── 学生を「放置」しないための体制づくりについても伺えますか?
関さん:現在は、朝の時点でその日の担当者やスケジュールをすべて明確にし、連絡を密に取ることで、学生が戸惑わないような環境を整えています。また、お昼のカンファレンスへの参加についても、学生の主体性を尊重しつつ、「多職種の連携が見られる貴重な場」として門戸を開いています。
── これからの課題は何でしょうか?
関さん: 看護実習指導者研修に参加して、他のステーションでは実習指導のために意図的に時間を確保している事例も知ることができました。今後は「業務の合間に」というだけでなく、「GCI芍薬訪問看護の重要なミッション」として指導の時間を公式に位置づけられるよう、管理者とも相談しながら、よりスタッフが協力しやすい体制を構築していきたいです。
── 最後に、関さん自身のこれからの目標を教えてください。
関さん: 私は一度、子育てに専念するためにキャリアを中断したことがありますが、今は「細く長く続けること」の重要性を感じています。ぶつ切りに見える経験も、今の訪問看護や実習指導にすべて繋がっています。
これからも学生さんにとってここでしか得られない学びを提供していきたいです。
サマリ
GCI芍薬訪問看護では、開設当初から実習生・研修生を積極的に受け入れ、「訪問看護は真の看護であり、やりがいがある」ことを次世代に伝えることを重視している。実習指導者として活躍する関美佐さんは、指導者研修を契機に、受け入れ側こそが自組織の強み(在宅ホスピス/緩和ケア等)を踏まえて目標を設計し、学生の学びを“座学と現場体験がつながる体験”へ導く必要性を強く意識するようになった。
受け入れの目的:次世代育成は専門職の責務であり、訪問看護の価値・やりがいを実習を通じて体感してもらう。
看護実習指導者研修での気づき:学校任せではなく、受け入れ側が「自分たちの訪問看護の特徴」を活かした目標を立て、学生にどう成長してほしいかを明確化することの必要性や価値。
芍薬ならではの学び:在宅ホスピス/緩和ケアの現場で、講義で学んだ理論(緩和ケア、病の軌跡など)が実践として腑に落ちる“深い納得感”が生まれる。
指導の工夫(指導マップ):学生の背景(学年・経験・志向)×ステーションの特徴を整理し、両者の目標を達成する手段を「設計図」として共有して、一貫した学びを提供する。
学生への向き合い:世代で一括りにせず、一人ひとりの個性を見極めて関わる姿勢を重視する。
運営上の難しさ:多忙な現場で同行調整や指導への温度差が起きやすく、チーム全員を巻き込むことは容易ではない。
チームを巻き込む仕掛け:実習の成果とスタッフへの感謝を具体的に共有する「感謝のフィードバック」で、指導の手応えと協力意欲を高める。
体制づくり:朝の時点で担当・予定を明確化し連絡を密にすることで、学生が“放置”されない環境を整備。今後は指導時間をミッションとして公式に位置づけ、継続可能な体制を目指す。