写真の説明: GCI芍薬訪問看護はリーダーシップ、チームワーク、世界最高水準の在宅ホスピス緩和ケアの質、の3点を大切にしています。リーダーシップとチームワークがあって初めて世界最高水準の在宅ホスピス緩和ケアが実現できると認識しているからです。
GCI芍薬訪問看護では、毎年「芍薬会」と称して次年度の経営目標や部門ごとの計画を発表しています(目標・計画の部)。また、同時に研修会を実施し全社多職種で同じコンテンツを学習します(研修の部)。その後の懇親会で研修の部の講師や、普段なかなか交流できない対人援助専門職同士や本部職員が交流できる場を設けています。2025年度の芍薬会は6月7日(土)に開催されました。
目標・計画の部
まず訪問看護ステーション芍薬の2024年度は小児在宅ホスピス・緩和ケアの分野で、指定訪問看護にとどまらず、支援ナースや通学支援といった幅広い活動に参画できたことが大きな成果です。また、非がん疾患、特に腎疾患に対する緩和ケアにも力を入れ、腹膜透析のケースを開始することもできました。マネジメント体制の強化についても成果があり、訪問看護ステーション芍薬瀬谷との有機的な連携を深めることができました。大規模ステーションとしての機能強化型Iの維持も、通算5年半の実績となりました。
次に、訪問看護ステーション芍薬瀬谷でも、小児在宅ホスピス・緩和ケアの分野で通学支援やレスパイトなど、行政とのタイアップにより、指定訪問看護の枠にとらわれずより地域に根ざした支援を展開しました。訪問看護芍薬含め、GCI芍薬訪問看護全体でこのように小児在宅ホスピス・緩和ケアの分野で新たな分野に取り組むことができたのは、これまで訪問看護師ひとりひとりが児とご家族の皆さまのケアに従事する中で、満たされていないニーズに気づき、ずっと心を痛めてきたからだと思います。例えば通学支援については、何とかならないのか、と10年近く前からスタッフ看護師が声を上げていました。レスパイトについては法人としてレスパイト施設運営をしてもらえないかと、これまで複数回地域の方からお声がけ頂いています。今般、行政とのタイアップによりこれらの事業を開始することができることとなり、GCI芍薬訪問看護の強み(医療的ケア児に対する質の高い看護や効率的訪問)を活かしながら、児とご家族の皆さまの在宅療養がより快適になるよう貢献できることを大変嬉しく思っています。
訪問看護ステーション芍薬瀬谷では、また、地域医療機関との信頼関係構築にも注力し、管理者交替からわずか1年で大きな成果を上げることができました。非がん疾患の緩和ケア、特に腎疾患の緩和ケアの成果が目覚ましかったと言えます。腎疾患の緩和ケアは我国では遅れていると言われています。GCI芍薬訪問看護では、これまで蓄積してきたがんに対するホスピス緩和ケアのノウハウを活かし非がん疾患の在宅ホスピス緩和ケアに取り組んでいきたいと思っています。
GCIケアリング芍薬(居宅介護支援事業所)では、組織体制を強化し、2名体制から3名体制へと拡充しました。また、教育体制の整備としてグループスーパービジョンを開始し、災害対策支援では要介護の全利用者に避難予定先を明示しました。
計画相談事業では、看護師とのチームワークを継続しながら、効果的・効率的に計画相談支援を実施しました。教育体制の整備や「わたしの災害対策ファイル」の素案作成など、災害対策にも力を入れました。
ケアマネージャーと計画相談支援員は、その業務の性質上、災害時にはご利用者の安否確認を含めご利用者災害対策にあたって中心的役割を果たすことが地域からも制度上も期待されるのが明らかです。GCI芍薬訪問看護では、これらの職種が先陣を切って災害対策に動いていますので、来期以降はその他の対人援助専門職も加わり、ご利用者の災害対策支援を強化していきます。
研修の部
研修の部では、腹膜透析訪問看護についての講演とBCP訓練を実施しました。
まずは滋賀県で腎臓病看護や腹膜透析看護に特化している訪問看護ステーションおりづるの管理者である大島香美様にご講演頂きました。滋賀県に加え大阪府でのご活躍がご高名で、腹膜透析学会での腹膜透析訪問看護の可能性を拓くご講演が印象的でしたので、今回芍薬会での講演をご依頼しました。
ご講演は腹膜透析患者さんの多様性や腹膜透析に対する医療者のイメージが実態と異なっているという点など、腹膜透析看護の実践経験の豊かさに加えて、強い問題意識と情熱があるからこそ見えてきた課題の詳細をご発表頂きました。医療者側にある、いまだに払拭されない「腹膜透析は自分でできる透析」というイメージや「トラブルが多い」というイメージは実態とは異なっているという点は、学会でも頻繁に問題提起されています。今回のご講演で深堀されていたのは、腹膜透析に適した人として医療者が抱きがちなイメージが、透析の手技や出口管理が理解できる人、自分で(家族で)透析が完結できる人、清潔操作ができる人、清潔な環境の人、生活がきちんとしている人、まじめで食事や内服などの管理ができる人だという点です。このようなご利用者はほとんど存在しないというのが実態で、ではどのような人が腹膜透析に適しているのかと言えば、腹膜透析をやってみたいと思う人、腹膜透析の方が自分らしくいれるなと思う人、腹膜透析だったら透析も悪くないなと思う人、腹膜透析をさせてあげたいと思ってくれる人がそばにいる人、腹膜透析がなんとなく良さそうと思う人、だというご発表でした。このように思うご利用者はたくさん居るはずで、ですので「諦めずに腹膜透析を選択して欲しい」というのが大島様からのメッセージでした。
ご講演の最後に、現在実践されている訪問看護の基本方針が、その人らしく生きていける力を引き出すということと、これがあればがんばっていけるものを守るという点であるというご説明がありました。ゴルフや水泳や旅行など、透析患者さんがそんなことできるの?と普通は思われてしまうことも、どうすれば実現できるか、から考えてご支援する。今回大島様から学んだ、腹膜透析自体を諦めることなく、そして腹膜透析になっても諦めることがないようなご利用者支援を、GCI芍薬訪問看護でも実践していきたいと思います。
BCP訓練については、以下の2つのシナリオとご利用者を想定して多職種グループワーク形式でシミュレーション訓練(机上訓練)を行いました。
- シナリオ(1):
- 震度7の地震が午後3時に発生。
- あなたは、事業所の訪問看護師、PT等対人援助専門職。
- あなたは、利用者宅へ訪問中。
- 津波、火災は発生しない。
- 停電、断水は発生しない。
- 電話、データ通信が混雑して使用できない。
- 道路の状況は不明
- ご利用者(1):
- 家族:遠方におり、電話したが連絡がつかない
- ADL:歩行可能だがふらつきがあり常時見守りが必要
- 医療的ケア:なし
- その他:木造のご自宅は古く倒壊の危険性が感じられる
- 通常訪問看護の内容:病態観察、保清、服薬管理等
- シナリオ(2):
- 震度7の地震が午後3時に発生。
- あなたは、事業所の訪問看護師、PT等対人援助専門職。
- あなたは、利用者宅へ訪問中。
- 津波、火災は発生しない。
- 停電が発生、復旧は不明。
- 電話、データ通信が混雑して使用できない。
- 道路の状況は不明。
- ご利用者(2):
- 家族:遠方におり、電話したが連絡がつかない
- ADL:歩行不可能
- 医療的ケア:人工呼吸器、吸引器、腹膜透析のいずれかの場合を想定して下さい
- 時間が許す限り(1)人工呼吸器(2)吸引器(3)腹膜透析の順で検討して下さい
- その他:木造のご自宅は古く倒壊の危険性が感じられる
- 通常訪問看護の内容:病態観察、医療機器の管理、服薬管理等
訓練実施後のアンケートでは、以下のようなコメントが寄せられました。
- 具体的に考えるきっかけになりました。
- 意識が深まり知識も得られた。
- 改めて災害時何をしなければならないか、何ができるかを考えることができた。
- ぜひ定期的に実施する機会があるとありがたいです。
- グループワークを通して様々な問題点があると再確認することができました。
- 多職種で一緒に考えることができたことが良かった。
- グループワークは意見交換できるので適切。
- ディスカッション時間がもう少しあると良かった。
- 机上訓練は初めて経験したが、冷静に考えられる態度でみんなで話し合い、考えておくことはとても有意義だと思った。
- 利用者宅での非常用バッテリーの有無を認知していないと気づきました。
- 具体的な場面(実際の利用者さん等)で具体的に想定していくことの大切さを実感しました。
- 改めて訪問看護は一人一人がその場で判断して行動しないとならないと思った。
- 一人一人の利用者について考えていきたいと思いました。
- 普段の訪問で、あまり災害時のことを考えられていないと感じた。
- 平時に想定することの大事さを痛感した。
- 呼吸器を装着した利用者さんの対応策をもっと具体的に知りたいです。
- 訓練する大切さを感じた。チームで考えていきたい。
- 事前準備の大切さが分かりました。
- 病院に入れば院内の指令系統はしっかりとありますが在宅で1人での判断になることを考えると、身が引き締まります。普段から準備や情報収集が大切と思いました。
- いざとなった時に思い出しながら対応できるよう普段からお一人お一人の避難を考えておくことが必要です。
- 日頃から指定避難場所を確認しておくことが必要と思いました。
- グループワークをしたことでいろいろな立場からの気づきを学べたので良かったです。
- 指定避難場所把握の必要性をあらためて認識しました。
- 万が一を意識することの重要性を学んだ。
- 建物の構造や立地条件、天候や季節など様々な状況に応じて判断することの難しさを感じた。
- 利用者宅での非常用バッテリーの有無を認知していないと気づきました。
多職種でのグループワーク形式が奏功し、深い学びにつながったようです。災害発生直後は管理者からの個別指示を仰ぐことは困難であり、対人援助者ひとりひとりが、その場で自分に何ができるか、何をすることが最も適切かを判断しなければなりません。GCI芍薬訪問看護では、今後もBCP訓練も活用しながら、対人援助者ひとりひとりが自身の身の安全を確保しつつも、目の前のご利用者とご家族の為にできること、すべきことを判断し行動できる能力を継続して身に着けていきたいと思います。
サマリー
【目標・計画の部】
- 小児在宅ホスピス・緩和ケアの拡充
指定訪問看護にとどまらず、通学支援や支援ナースなど多様な支援を展開。行政との連携により、地域に根ざした支援が実現。 - 非がん疾患(特に腎疾患)への対応強化
腹膜透析のケースを開始し、がん以外の疾患にも緩和ケアのノウハウを応用。 - 組織体制の強化
- 訪問看護ステーション同士の連携深化
- 居宅介護支援事業所は2名から3名体制へ拡充
- 災害対策として、全利用者の避難先を明示
- 災害対策の推進
ケアマネージャーや計画相談支援員が中心となり、災害時の支援体制を強化。今後は他職種も巻き込んでいく方針。
【研修の部】
- 腹膜透析訪問看護の講演
滋賀県の専門家による講演で、腹膜透析に対する誤解(「自立できる人向け」など)を解き、本人の希望を重視した支援の重要性を強調。 - 誤解:腹膜透析に適した人とは、透析の手技や出口管理が理解できる人、自分で(家族で)透析が完結できる人、清潔操作ができる人、清潔な環境の人、生活がきちんとしている人、まじめで食事や内服などの管理ができる人→この誤解を払拭しなければならない
- 本当の腹膜透析に適した人:腹膜透析をやってみたいと思う人、腹膜透析の方が自分らしくいれるなと思う人、腹膜透析だったら透析も悪くないなと思う人、腹膜透析をさせてあげたいと思ってくれる人がそばにいる人、腹膜透析がなんとなく良さそうと思う人→腹膜透析を諦めないで欲しい
- 大島香美さんの腹膜透析訪問看護:その人らしく生きていける力を引き出すということと、これがあればがんばっていけるものを守る→自分らしさも諦めないで欲しい
今回の学びを活かし、腹膜透析自体を諦めることなく、そして腹膜透析になっても諦めることがないようなご利用者支援を、GCI芍薬訪問看護でも実践していきたいと思います。
BCP(事業継続計画)訓練
震度7の地震を想定した2つのシナリオで、訪問中の対応を多職種でシミュレーション。
利用者の状態や医療機器の有無に応じた判断力が求められることを再確認
災害時の備え(非常用バッテリー、避難場所の把握など)の重要性を共有
参加者の声(抜粋)
「具体的に考えるきっかけになった」
「多職種での意見交換が有意義だった」
「災害時の判断力と事前準備の大切さを実感」
GCI芍薬訪問看護では、今後もBCP訓練も活用しながら、対人援助者ひとりひとりが自身の身の安全を確保しつつも、目の前のご利用者とご家族の為にできること、すべきことを判断し行動できる能力を継続して身に着けていきたいと思います。