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小児プライマリケア認定看護師課程を修了しました

小児プライマリケア認定看護師課程修了者インタビュー

GCI芍薬訪問看護の訪問看護師が、1年間に渡る小児プライマリケア認定看護師教育課程を無事終了しました。山口睦看護師に、この課程を通じて経験したことや発見したことについて、インタビューしました。

小児プライマリケア認定看護師教育課程とは

インタビューアー

1年間お疲れ様でした。まずは小児プライマリケア認定看護師教育課程って、どのようなものか教えて下さい。


山口睦看護師

小児プライマリケアとは、「疾病や障害という特性だけではなく、その子どもと家族、さらには関連する地域社会(保育所や学校、児童会など)やその周辺文化も含めて捉え、子どもとその家族が持つ力が最大限発揮されるよう、子どもの連続的な育ち(成長発達)をコーディネートされたケアで支えること」と定義されます。小児プライマリケア認定看護師教育課程は、このようなケアの専門家を養成する過程で、以前は600時間で「小児救急看護認定看護師」過程と呼ばれていました。最近、特定行為研修も組み込みより充実した800時間の過程が新設されました。対象も、以前は救急時の小児のみでしたが、私が受講した新過程は全ての子どもの健康問題を対象としており、広い視野で学ぶことができましたし、私のように地域で訪問看護師として小児看護に従事している看護師にとって職場ですぐに活用できる知識・技術を学べる過程に生まれ変わっています。

受講して良かった点

インタビューアー

受講してみて良かった、と思うことは何ですか?


山口睦看護師

良かったことはたくさんあって一言ではとても話せないのですが、色々な看護師がクラスメートに居て、それは本当に良かったと思います。全国各地から、看護に熱ぅ~いエキスパートナースが集まっていて、すごく刺激になりました。色々なテーマでクラスメートとディスカッションを重ねることは、普段あまりないことでしたし、それぞれのクラスメートの看護観の違いが手に取るように分かって、ビックリする体験でした。


インタビューアー

看護観の違い・・・どんな違いだったのですか?


山口睦看護師

主に病院看護師と在宅の看護師の看護観の違いですね。病院看護師は、児の身体に着目するのですが、在宅の看護師はそれだけではなく、家族や生活まで広く着目します。病院では児の治療が目的ですから、それで当然なんです。私も以前は病院看護師でしたし、よく言われていることですので、それは頭では分かっていたつもりなのですが、クラスメートと深いディスカッションを何度も重ねることで真に分かったというか、腹落ちしました。


インタビューアー

頭で分かっているだけではなく、そういう深いレベルで理解できていると、きっと実践の場でスムーズに活用できる力になったでしょうね。


山口睦看護師

そうですね。これからきっと、病院看護師との連携に役立てていけると思います。

大変だったこと

インタビューアー

大変なこともあったと思います。一番大変だったことは?


山口睦看護師

レポートが大変でした!!!!!睡眠時間が2~3時間のこともよくありました。レポート作成は大学時代以来なので、最近遠ざかっていましたから、本当に大変でした。


インタビューアー

これまでも看護記録でいつも書くということはしていたのでは?


山口睦看護師

日々の看護記録を書くのとは全然違うんです。普段考えてもいないことや、初めて学んだことについて、網羅的に情報を集めて、順序だてて整理して、そして自分の見解を述べるって、本当に大変でした。


インタビューアー

なるほど。ただ単に事実を述べるだけではなくて、分析して自分の考えも述べないといけないのですね。


山口睦看護師

認定看護師は、看護実践だけではなく、他者を指導したり相談にのるという役割が期待されているので、深く考え、それを言語化する能力が必要だからだと思います。


インタビューアー

相談に?他の看護師の相談にのるって、大変ですよね。認定看護師さんて、ご自身が知らないケースにも相談にのることが期待されているんですか?


山口睦看護師

そうなんです。相談にのると言っても、答えを与えるとかそういうことではなくて、相談してきた看護師が、真の問題に気づくようにサポートする役割です。なので、自分が全く知らないケースでも相談にのることができるんです。それは以前から私は得意だと感じていたので、今回学んだことを活かして、これからどんどん皆の相談にのっていきたいと思っています。

特定行為研修が組み込まれている

インタビューアー

ところで特定行為研修が組み込まれているコースだということですが、特定行為としては何を学んだのですか?


山口睦看護師

私は38ある特定行為のうち、「気管カニューレの交換」と「持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整」「脱水症状に対する輸液による補正」の3領域を学びました。いずれも知識・技術面双方で最先端のことを学べたと思いますし、在宅での実践でも活かせると思います。


インタビューアー

これまで医師が担う領域で、山口さんにとって初めてのことばかりだったと思うのですが、積極的に特定行為を習得しようと思ったのはなぜなのですか?


山口睦看護師

今後も在宅で療養する患者さんはうなぎ上りだと予測されていますよね。私たち看護師が医師の負担を軽減させることで患者さんの為になるなら、それは積極的に取り組まないといけないな、と思いました。いわゆる“タスクシフト”です。タスクシフトは特定行為のように医師から看護師へ、のシフトだけではなく、看護師からヘルパーさんへ、のシフトも私は重要だと思っています。

今後の実践で形にしたいこと

インタビューアー

1年間、多岐に渡って実力を身に着けたので、これから実践で形にしたいというアイディアが色々湧いてきていると思います。教えて頂けますか?


山口睦看護師

小児が地域で長く過ごせるように看護師として力を尽くしていきたいと思っています。これは訪問看護師を目指した時から一貫した私の思いであって、小児プライマリケア認定看護師課程を受講したから、というわけではありません。ただ、この教育課程を受講することでより強く思うようになったのは、地域の他の医療従事者や福祉関連者と連携するにあたって、私が皆をまとめる役割を担わなければならないな、ということです。ヘルパーさんや、相談員さんやPT/OT/STなどの皆さまが、それぞれ意見を言い合って、色々考えられるような場づくりをしていきたい。特に、ヘルパーさんは最も小児に近く、ママがヘルパーさんにだけ話しているようなこともよくあって、ご両親からとても信頼されています。そんな在宅には無くてはならないヘルパーさん達なので、大切にして、辞めたりしないようにご支援していきたい。分からないことや困っていることがあれば何でも聞いて欲しいし、技術面で心配なことがあれば私が丁寧にお教えしていきたい。ヘルパーさんも、話すことで気持ちが楽になったり、自信が持てたりするんじゃないか、と思っています。


インタビューアー

ヘルパーさんにとっては、ナースは怖い存在だと聞いたことがありますが?


山口睦看護師

そうらしいですね。それじゃダメなんです。そんなんじゃ、小児が長く過ごせる地域を作ることはできないんですよ。


インタビューアー

具体的に、どのようにその「場」づくりをするのですか?


山口睦看護師

小児担当者会議を月1~2回開催しようと思っています。それに加えて、色々なしかけをしていくと良いと思っています。これから私の思いや構想をGCI芍薬訪問看護の皆に話してみようと思います。うちにはアイディアマンも多いし、皆協力的なので、皆で形にしていけたら、と思っています。小児が長く過ごせる地域づくり、という私の夢を実現させる為にも、認定看護師に課された期待役割からも、内部教育や外部への発信も重要です。せっかく貴重な学びを得たのですから、がんばっていきたいと思います。


インタビューアー

認定看護師に課された期待役割・・・・・?

認定看護師に課された期待役割と小児医療の基盤づくり

山口睦看護師

認定看護師には、高い臨床推論力・病態判断力に加えて、多職種協働をリードする役割が期待されています。今後も病院から地域へと医療体制がシフトし続けていく社会情勢の中で私は、訪問看護における認定看護師として、病院と福祉、そして教育機関と連携しながら、小児医療を支えていく基盤をつくっていく一員となれたら・・・と思っています。


インタビューアー

山口さん自身で多職種連携するだけではなく、他の多職種/多機関同士が連携できるような、そんな地域社会づくりを目指しているんですね。山口さんの夢や構想に感激しました。山口さんの小児医療の専門職としての能力を活かした地域社会の基盤づくりに、私も是非協力させて下さい。今日はありがとうございました。

サマリー

小児プライマリ認定看護師課程とは小児の身体特性に加え家族や小児を取り巻く環境を広く捉え児の成長発達を支えるケアを担う専門家の養成講座です。小児プライマリ認定看護師課程を受講して良かったことは、小児プライマリケアという同じ志の看護師と何度もディスカッションすることで、目指すところは同じでも職場特性によって看護観が異なるということがよく理解できたことです。小児プライマリ認定看護師課程で大変だったのは、網羅的に集めた情報を系統立てて整理するレポート作業でした。認定看護師は他の看護師が自ら真の問題に気づけるよう導きを与えるという役割を担うので、レポートを通じた考察力や言語化能力の訓練が必須だと認識していたのですが、大変でした。小児プライマリケア認定看護師課程には特定行為研修が組み込まれています。医療・介護人材不足の日本では、タスクシフトが重要だと思い、積極的に学び、最先端知識や技術を習得することができました。今後の実践では、小児が地域で長く暮らせるような仕組みづくりでリーダーシップを発揮していきたいです。具体的にはヘルパーさんが私たち看護師と気楽に話をして、自信につながったり気持ちが楽になるような機会を作っていきたい。認定看護師には、高い臨床推論力・病態判断力に加えて、多職種協働をリードする役割が期待されています。このような期待役割を果たしながら、小児医療を支えていく基盤をつくっていく一員となれたら・・・と思っています。