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2026年度芍薬会

2026年6月27日、株式会社GCIは横浜駅近くの会場にて、「2026年度 芍薬会」を開催いたしました。本会は、次年度の経営目標や各部門の事業計画を共有するとともに、専門知識を深める研修やスタッフ間の親睦を図る、GCI芍薬訪問看護にとって最も重要な年次行事です。当日の様子をご紹介いたします。

新たな挑戦へ:2026年度の目標とビジョン

第一部の「目標・計画の部」では、代表取締役の鈴木直美より「世界最高水準の在宅ホスピス緩和ケア」を目指す2026年度の全社経営目標が発表されました。

昨年度の成果として、小児レスパイト事業、通学支援、学校での医療的ケアといった小児在宅ホスピスの充実や、SpiPas(スピリチュアルペイン・アセスメントシート)の活用による非がん疾患の緩和ケアの準備完了などが報告されました。今年度はこれらをさらに高度化させ、特に「成人がん」「神経難病」「小児」「腎不全(腹膜透析)」「呼吸器」「認知症」の各分野において、他にはない専門性と独自性を追求していきます。

続いて、訪問看護ステーション芍薬、訪問看護ステーション芍薬瀬谷、計画相談、GCIケアリング芍薬の各部門管理者から、地域連携の強化やDX化の推進、リーダーシップの向上を掲げた具体的な事業計画が発表され、全スタッフが新年度に向けた決意を新たにしました。

共に歩む仲間を祝して:勤続10年表彰と新メンバーの紹介

今回の芍薬会では、長年GCIを支えてきた3名のスタッフ(井上友紀さん、山口睦さん、大出寛子さん)の勤続10年表彰が行われました。鈴木代表から感謝の言葉とともに、さらなる専門的研鑽を支援する記念品が贈られました。

また、新しいボランティアとして、ビション・フリーゼの女の子「モコちゃん」が紹介されました。モコちゃんはアニマルセラピーとして、今後スタッフと一緒に患者さんのもとを訪問する予定です。

臨床の質を高める:2つの専門研修

第二部の「研修の部」では、緩和ケア/腎不全治療の第一線で活躍される講師をお招きし、より深い学びを得ることができました。

講演①:「ホスピス緩和ケアの質向上に活かすPRO~あなたの実践をもう一歩深めませんか~」 講師:梅田 恵 様((株)緩和ケアパートナーズ代表/がん看護専門看護師)


がん看護の第一人者である梅田先生には、「患者報告型アウトカム(PRO)」を臨床でどのように活用すべきかをご講演いただきました。特に、患者さん自身が症状や生活の質をPROで評価するツールである「IPOS(Integrated Palliative care Outcome Scale)」を用いることで、痛みや息苦しさといった身体的症状だけでなく、不安や家族の悩みなどの心理社会的ニーズを客観的に捉える重要性を学びました。

看護の本質と人権から捉え直すPROの真価
特に印象的だったのは、PROの重要性の理解のために看護の定義にまでさかのぼって下さり、さらには基本的人権と結び付けてPROの意義をご説明頂いた点でした。

ナイチンゲールは看護を「生命力の消耗を最小にすること」と定義しています。ヘンダーソンは看護を「健康/健康の回復/平和な死の一助となる生活を助けること」と定義しています。このように深く人間と関わるのが看護であるため、技術的な知識・専門能力も重要ですが、それ以上に「良いひとであること」や「人として自分を開示すること」そして「人として患者に関心」を抱き「大切な人として患者ケア」をできる看護師が「Good Nurse」と評価されるという研究結果もご発表頂きました。

人権擁護と患者目線の看護を実現するIPOS
一方で、このような看護の性質から、必然的に人権を侵害しやすいため、患者さんの声を聴くことが非常に重要になってきます。患者さんの声を「聴く」ことができるのがPROであり、その評価ツールであるIPOSを日々の看護/ケアに導入することで、看護師のひとりよがりにならない、常に患者さん目線の看護が実現できることになります。

在宅対人援助の本質とACP(意思決定支援)への深化
看護に限らず在宅での対人援助の本質は、病気をみるのではなく「その人の暮らしを整えること」にあります。患者さんに深く長く関わるため、気づかないうちに患者さんの人権を侵害してしまうリスクもはらんでいます。IPOSなどのツールを活用し、得られたデータを対話のきっかけとしてケアに反映させたり、チームで患者さんの状態を適切に共有することで、患者さんの価値観や尊厳を守る意思決定支援(ACP)をさらに深化させていく決意を固めました。


講演②:「やさしい腹膜透析~ホスピスケアとの親和性と管理の実際~」 講師:小島 茂樹 先生(コジマ内科クリニック院長)

https://www.kojima-naika.com/interview: 2026年度芍薬会

腎臓内科医でありながら、「透析メニューの決定には患者さんの価値観やライフスタイルを反映すべき」という緩和ケア医のような信念を持つ小島先生にご登壇いただきました。ご講演テーマの「やさしい」には患者さんの身体に「優しい」という意味と、医療従事者にとって対応が「易しい」というふたつの意味があります。

「サイエンス」と「アート」を兼ね備えた透析処方
腹膜透析(PD)は、血液透析(HD)に比べて生体内部環境の変化が穏やかで、残存腎機能を保護しやすいという特徴があります。先生は、医学的なデータに基づく「サイエンス」としての処方だけでなく、患者さんの睡眠、仕事、家族の負担に配慮した「アート」としてのデザインが重要であると強調されました。特に、残存腎機能に応じて透析量を上乗せする「Incremental PD(段階的導入)」は、バッグ交換回数を最小限にし、患者さんの負担や感染リスクを軽減するという大きなメリットがあります。

テクノロジーと地域で支える「おまかせPD(assisted PD)」
在宅での管理を支える最新の機器として、自動腹膜透析装置(サイクラー)「かぐや」や「マイホームぴこ」、そしてクラウドを活用した遠隔モニタリングシステムが紹介されました。これにより、クリニック側で患者さんの除水量や血圧をリアルタイムで把握し、トラブルに速やかに対応することが可能になっています。

「Y-ASAP」:切れ目のない腎不全ケアの構築
小島先生が提唱する「横浜旭・瀬谷地区腹膜透析パートナーシップ(Y-ASAP)」の構想についても詳しくお話しいただきました。これは、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院のような基幹病院と、コジマ内科クリニック、そしてGCI芍薬訪問看護が密に連携し、PDの導入から維持期、さらには人生の最終段階(PD last)における訪問診療や看取りまで、地域全体でシームレスに支える仕組みです。

終末期の尊厳を守るPDの活用
さらに、透析医療の終末期における柔軟な選択肢として、バッグ交換回数を最小限にしたり透析液を見直すことで透析の負担を軽減しつつ透析を止めることによる様々な苦痛も生じることのないPDへ移行する「PD last」や、生命維持よりも症状緩和と在宅での尊厳ある暮らしに主眼を置く「Palliative PD(緩和的PD)」という概念についても示唆に富むお話をいただきました。特に、お亡くなりになる直前まで適切な体液コントロールを行い、脱水や浮腫のない穏やかな姿で最期を迎えていただく「エンジェルPD」という考え方は、患者さんの尊厳を守るだけでなく、残されたご家族のグリーフケアにもつながる、ホスピス緩和ケアの本質を突いたものでした。

現在血液透析の通院を困難であると感じたり、血液透析自体で身体的苦痛を感じているご利用者は、血液透析から腹膜透析に移行することで、通院する必要がなくなり、身体も楽になります。こうすることで入院/入所する必要なく、人生の最期まで自宅で暮らし続けることができるPD lastは非常に有用であるとGCI芍薬訪問看護は考えています。小島先生と協力・連携することで、こうしたご利用者/ご家族のご希望を叶えていきたいと思っています。

患者さんの「腎生設計」を共に歩む
実際の症例として、一度は腹膜炎で血液透析に移行しながらも、「自宅で家族の世話をしたい」という強い希望(2nd SDM)により、一度はHDに移行したもののPDに復帰した75歳女性のケースが紹介されました。疾患を抱えながらも、患者さんが望む場所で充実した人生を送れるようサポートする「腎生(じんせい)設計」の考え方は、まさに私たちが目指す在宅ホスピスケアと深く共鳴するものでした。

結びに

会の締めくくりには、講師の方々も交えた懇親会が行われ、部署の垣根を越えてチームワークを深めることができました。

GCI芍薬訪問看護のシンボルである白い芍薬に込められた、他者のために勇気を持って立ち上がる強さと、柔軟な連携を大切にしながら、GCIは今年度も地域の方々の「自分らしい暮らし」を全力で支えてまいります。

2026年度も、GCI芍薬訪問看護をどうぞよろしくお願いいたします。

2026年度 芍薬会 サマリ

1. 2026年度 経営目標と事業計画

  • 全社目標: 「世界最高水準の在宅ホスピス緩和ケア」を目指す。
  • 重点分野: 成人がん、神経難病、小児、腎不全(腹膜透析)、呼吸器、認知症の6分野で専門性と独自性を強化。
  • 各部門方針: 地域連携強化、DX推進、リーダーシップ向上により新年度の計画を実行。

2. 表彰・新メンバー紹介

  • 勤続10年表彰: 永年貢献したスタッフ3名(井上氏、山口氏、大出氏)を表彰。
  • セラピードッグ着任: アニマルセラピーボランティアとしてビション・フリーゼの「モコちゃん」が加入。

3. 専門研修(2つの講演)

  • 講演①:「ホスピス緩和ケアの質向上に活かすPRO」(講師:梅田 恵 氏)
    • PRO(患者報告型アウトカム)および評価ツール「IPOS」の導入意義を学習。
    • 看護の本質と人権擁護の視点から、患者の声を客観的に捉え、患者主体のケアや意思決定支援(ACP)を深化させる重要性を共有。
  • 講演②:「やさしい腹膜透析~ホスピスケアとの親和性と管理の実際」(講師:小島 茂樹 先生)
    • PDは患者さんの身体に優しく、医療従事者にとって易しい
    • 腹膜透析(PD)における「サイエンス(医学データ)」と「アート(生活に配慮した処方)」の融合を学び、遠隔モニタリング等のテクノロジー活用を共有。
    • 地域連携体制「Y-ASAP」の推進や、終末期に配慮した「PD last」「緩和的PD」「エンジェルPD」を通じ、患者の価値観に寄り添う「腎生設計」の支援を目指す。