写真の説明:2026年7月、訪問看護財団が主催する「訪問看護普及強化月間手ぬぐいPR作戦」に参加しました。GCI芍薬訪問看護の訪問看護師とリハスタッフが首や頭に巻いているのが、訪問看護財団が作成し全国の訪問看護ステーションに配布した手ぬぐいです。
目次
はじめに
皆さんは、「訪問看護」という言葉をご存じでしょうか。
ご自身やご家族が利用されたことがある方にとっては身近な存在かもしれません。一方で、「名前は聞いたことがあるけれど、実際にどんなことをしているのかはよく分からない」という方も、まだまだ多いのではないでしょうか。
訪問看護は、看護師などがご利用者のご自宅を訪問し、療養生活を支えるサービスです。病気や障がいがあっても、できるだけ住み慣れた場所で、その人らしく暮らしたい――そんな一人ひとりの思いに寄り添いながら、医療と暮らしをつないでいくことが、訪問看護の大切な役割です。
今回、私たちは日本訪問看護財団が実施した「手ぬぐいPR作戦」に参加しました。
「訪問看護の風」を全国へ
日本訪問看護財団では、2026年度から毎年7月を「訪問看護普及強化月間」と位置づけ、訪問看護の認知向上に向けた普及啓発活動をスタートしました。
その一環として行われたのが、全国一斉の「手ぬぐいPR作戦」です。 財団からいただいたオリジナルの手ぬぐいを、全国の会員が日々の活動の中で身につけたり持ち歩いたりすることで、地域の方々の目に「訪問看護」という言葉や存在を届けていく取り組みです。
私たちもこの趣旨に賛同し、スタッフが手ぬぐいを首や頭に巻いてご利用者宅への訪問を行いました。いつもの訪問看護の風景に、手ぬぐいが一枚加わる。それだけのことなのですが、スタッフにとってもいつもとは少し違った楽しい取り組みとなりました。
そして何より、「これは何のための手ぬぐいなの?」というご利用者やご家族との会話が生まれること自体が、訪問看護を知っていただく大切なきっかけになると実感しています。
『風、薫る』という大きな追い風に乗せて
今回のキャンペーンには、もう一つ大きな意味があります。現在NHKで放映されている連続テレビ小説『風、薫る』です。
『風、薫る』では、明治時代を舞台に、看護の道を歩む人々の姿が描かれています。日本訪問看護財団も、このドラマの放映によって訪問看護やその歴史に対する社会的な関心が高まることを、「訪問看護を全国の皆さんに知っていただく絶好の機会」と捉えています。
ドラマをきっかけに「看護って、どんな仕事なのだろう」「明治時代に始まったらしいけど、訪問看護って、今はどんなことをしているのだろう」と興味を持ってくださる方が増えれば、それは私たちにとっても大きなチャンスです。
『風、薫る』という追い風に乗って、訪問看護についてももっと多くの方に知っていただきたい――そんな思いが、今回の「手ぬぐいPR作戦」には込められています。
私たちのシンボル「白い芍薬(しゃくやく)」に込めた3つの思い
この「手ぬぐいPR作戦」で地域を巡りながら、私たちは自分たちの胸にある「シンボルマーク(白い芍薬)」の意味を改めて噛みしめていました。
日本では古くから、美しく洗練された女性を例えて「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と言います。江戸時代には侘び寂びを尊ぶ「茶花」として親しまれ、今では世界中で愛されている日本文化に深く根ざしたお花です。
私たちは、この「白い芍薬」に3つの大きな誓いを込めています。
- 「利他」の心で立ち上がるリーダーシップ: 芍薬がすっと気高く立つように、ご利用者様、ご家族、地域社会、そして日本全体のために、利他の心をもって勇気あるリーダーシップを発揮すること。
- どんな色にも染まるチームワーク:「白」は何色にも染まれる柔軟な色です。ご利用者やご家族はもちろん、地域で共に働く他の事業所の皆さんと良好なチームワークを築くため、決して自分たちの価値観や方針を一方的に押し付けないこと。
- プロフェッショナルとしての決意と快適な療養環境:東洋医学において、芍薬の根は古くから鎮痛剤や消炎剤として人々の苦しみを和らげてきました。私たちは医療のプロとして、ご利用者様の身体的な苦痛だけでなく、心理的・社会的・スピリチュアルな苦痛にも寄り添い、安心と快適さをお届けします。
日本の歴史と文化に根ざしながら、世界に通じる誇りとプロフェッショナリズムを持って地域を走る――この白い芍薬の願いは、まさに今回私たちが「手ぬぐい」を届ける思いと深く重なっています。
訪問看護は、特別なものではありません
私たちが日々ご利用者のお宅を訪問していると、訪問看護は決して特別な場所で行われる特別なサービスではないことを実感します。
朝、いつもの道を車で走り、ご利用者のお宅へ伺う。 体調を確認し、必要な処置を行い、薬の管理を確認し、ご家族のお話を伺う。
時には、病気のことだけではなく、 「最近、食欲が出てきた」 「孫が遊びに来てくれた」 「庭の花がきれいに咲いた」 そんな日々の暮らしの話をすることもあります。
訪問看護が支えているのは、「病気」だけではありません。その人がその人らしく、心穏やかに生活していくための毎日そのものです。
「知っている」ということが、誰かを支える
訪問看護を必要とする時は、突然やってくることがあります。例えば、
- もの忘れが増えて不安になったとき
- 病気になったときや退院するとき
- 介護が必要になったとき
- 最期まで自宅で過ごしたいと思ったとき
そんなとき、「訪問看護という選択肢がある」「初期の段階から相談していいんだ」と知っているだけで、ご本人やご家族の選択肢は大きく広がります。だからこそ私たちは、今すぐ訪問看護を必要としている方にサービスを届けるだけでなく、まだ必要としていない方にもその存在を知っていただくことが大切だと考えています。
今回、私たちが白い芍薬の思いを胸に、手ぬぐいを身につけて地域を走ったことも、その小さな一歩です。次のセクションでは、もの忘れが増えて不安になったときを例にあげてご説明します。
認知症の初期段階から訪問看護を使うべき理由
医療や介護の現場では、「認知症の初期段階からの訪問看護の活用」が大変有効であることが分かっています。
「まだ日常会話もできるし、訪問看護を頼むほどではないのでは?」と思われるかもしれませんが、実は症状が軽度のうちから介入を開始することには、確かな専門的・医学的根拠があります。
- 行動・心理症状(BPSD)の防ぎ手となる 初期の頃は「今までできていたことができない」という不安や焦燥感が強く、ご家族に感情をぶつけてしまうことも少なくありません。医療のプロが寄り添って丁寧にお話を伺い、適切な接し方をアドバイスすることで、不安からくる行動・心理症状(BPSD)の悪化を予防できます。
- 介護サービスへのスムーズな移行と信頼関係の構築 認知症が進行してから見知らぬ介護サービスを導入しようとすると、拒否感が強く出ることがあります。初期の段階から看護師が定期的に訪問し、「誰かに支援される心地よさ」や信頼関係を築いておくことで、将来的にデイサービスやヘルパーなどを利用する際もスムーズに受け入れられるようになります。
- ご家族の孤立と介護負担の軽減 戸惑いや不安を一人で抱え込みがちな初期のご家族に対し、専門知識を持った看護師がアドバイスや精神的ケアを行います。相談できる存在が身近にいることで、介護者の心の余裕やQOL(生活の質)の維持につながります。
- 服薬管理の定着と身体疾患の早期発見 認知症の初期に多く見られるのが「お薬の飲み忘れ」や「重複服薬」です。服薬が不規則になると持病の悪化につながり、それがさらに認知機能を低下させる悪循環を生みます。看護師が初期から管理をサポートすることで病状の安定を図り、本人が変化を上手く言葉にできない身体の不調(感染症や体調変化)もいち早く察知できます。
このように、早期から訪問看護が関わることで、ご本人の自尊心と認知機能を守り、住み慣れたご自宅で安心して過ごせる期間をより長く伸ばすことができるのです。
これからも「訪問看護の風」を
日本訪問看護財団が掲げる「訪問看護の風を、ひろげよう」という言葉に、私たちは心から共感しています。
手ぬぐいPR作戦は7月の取り組みでしたが、私たちが「訪問看護を知ってもらう」活動に終わりはありません。
一人でも多くの方に訪問看護を知っていただくこと。 いざという時に「そういえば訪問看護があった」と思い出していただくこと。 そして、どんな状況にあっても、住み慣れた地域で自分らしく快適に暮らせる方を一人でも増やしていくこと。
『風、薫る』の放映という大きな追い風を受けながら、白い芍薬のように気高く柔軟に、そして温かく。これからも私たちは地域の方々に寄り添い、「訪問看護の風」を届け続けてまいります。